わたしは音大を出ていないので,「これはもう永遠の課題曲になるだろうなぁ」という名曲が山ほどあります。
自分の実力がかすりもしない難曲は論外として、3分の2くらい弾けるんだけど山場が弾けないとか、速度を落とせば弾けるけどオリジナルの速さではまだ無理みたいな、手が届きそうで届かない、じれったい曲の楽譜たちが、今も実家のピアノの上に居座っています。
その中のひとつが、ベートーヴェンのピアノソナタ テンペスト第三楽章。
こんな曲です。この方の演奏大好きです。
もう10年以上前に韓国ドラマで流れていた気がする。タイトルは何だったっけ。
ピアノ講師の試験の自由曲の候補として練習していました。
最初はシューマンの即興曲op.90-2で何度か受験していたのですが、あまりに落ちまくるので見かねた先生が曲を変更してくれました。
だって面白くないんですよシューマン。
冒頭なんかハノンみたい。
好きな人は好きだと思いますが、どうもわたしとは相性が良くなかった気がする。
で、先生が用意してくれたのが、テンペストと悲愴第三楽章。
当時はYoutubeがそれほど広まっておらず、CDを買って模範演奏を聴きました。
か…カッコいい…!!
感情や生き様を全部音にぶつけたあの感じ。荒々しさが心のど真ん中に刺さります。
どちらも捨てがたかったのですが、最終的に悲愴を取りました。
というのも、わたしはふつうの人より遥かに手が小さいのです。
目一杯指を開いても、せいぜい1オクターブ+1音。
結婚式でネイルをしてもらったら、担当さんがわたしの手を見るなり「小さい手ですねー!」と言ってしまうくらい小さい。手袋はキッズサイズでも指が余る。
なもんで、オクターブがわんさか出てくるテンペストはリスキーだよね、と。
ミスタッチはなければ無いほど合格に近づきますし、わたしは既に何度も転げ落ちてる落ちこぼれ。
ここは冒険せずに安全策でいきましょう。
高いけれど見やすいと評判の春秋社版の楽譜まで購入し、心機一転。
紙質が真っ白で余白もあり、段の配置が少なめでとても見やすい。
引いてる最中に勝手にページがめくれないのも良し。
ただ、高いんです。2500円くらいする。
ええい、合格のためだ致し方ない。このまま落ち続けても受験料がかさむ一方だし。
自分に色々なプレッシャーをかけた甲斐あり、やっと合格〜!肩の荷が降りました。
そうそう、この日の試験の待合室で音大の研究生が隣にいたのですが、「わたしこれで3度目なんです。落ちたらどうしよう…緊張する…」と、わたしより深刻な表情をしてました。
ふつうの大学で言うところの院生に当たる研究生でさえ2回も落ちてるんだから、そりゃ高卒のわたしが4回落ちるのは当然だわ。と、彼女には悪いけど妙に安堵してしまい、今にして思えばそれが合格に結びついたのかもしれません。
あの子どうなったかな。きっと受かってるよね。
さて、残されたテンペスト。
候補に上がっていた段階で、どちらがしっくりくるか様子を見るため2曲同時進行でしばらく練習していたのです。
途中で悲愴に全振りしたため中途半端なところで終わっていました。
このままレッスンを続けてもいいけど、でも既に合格した悲愴と同レベルの曲を習い続けてもあんまり意味がない。
さらに上のグレードを目指すという選択肢もあったけど、でも自分の演奏が上手くなったところで大学未経験のわたしは受験対策ができません。
「めちゃくちゃ上手に弾けるけど音大に進む気のないピアニストを育てます。」という訳のわからないコンセプトを掲げる先生になってしまうので、上を目指すのはやめました。
だったら習い続ける意味もあまりないよねと、長くお世話になったレッスンも卒業。
だんだん生徒さんも増えてきて自分の実力を伸ばすことに注力できなくなり、結局テンペストは仕上げられないままになってしまいました。
ピアノ講師をやめた今、弾くのは自分のために他ならないのですがなかなか思いがそちらへ向きません。
毎日練習しないとすぐ弾けなくなってしまうし、練習時間も足りないし。
諦めたわけではないので楽譜は大切に取ってあります。
そんな思いで残してる楽譜がたくさん。
いつか日の目を見る時がきたらいいんだけどなぁ。
不思議ですが、年を取っても指の動きってあまり衰えません。年のせいで速く弾けなくなるということは滅多にないと思います。YouTube見てると70代のピアニストなんてわんさかいます。
初見もできるし暗譜もできる。
もちろん日々の鍛錬あってのことでしょうが、わたしもそうありたいものです。
感謝日記
こちらの都合を汲んでお休みを取得させてもらえた。
ハイドロフラスクの使い心地が最高
観葉植物が元気に育って嬉しい