去年、思い立って七輪を買いました。
BBQコンロでも良かったのですが、ふたり家族にはちょっと大きすぎると思い、
もっと気軽に火を起こせる七輪を選びました。
1200円くらいの小さいサイズにしたのですが、ちょうど良いです。
10分程度で火が起こせるし、炭も焚き付けもほんの少しあればじゅうぶん。
小さいのでスペースも取らず、庭の片隅ですぐ始められるのがいいですね。
七輪で肉を焼くときは、ちょっと奮発してお肉屋さんへ行き、高いカルビやサガリなどを買ってきます。500gもあればお腹いっぱいになるので、焼肉屋さんへ行くより安くあがるんじゃないかな。
もうね、食べ放題で元を取れる年齢ではないんですよね。
ホテルの宿泊プランにはビュッフェ形式の夕食が組み込まれているものが多いですが、
おそらく大した量は食べていないと思います。
目だけは現役というか欲張りで、「あれも食べたい、これも食べたい」と迷ってしまうし、つい全部食べられそうな気がしてたくさん取ってしまいますけど、食べた後にちょっと胃がチクチクし出して「食べすぎた…」と後悔するパターンがほとんど。
量より質。同じお金を払うなら、少しでもいいから良い物を選びたい。
そういう志向に変化している40代です。
炭火はそれだけでもじゅうぶん美味しく焼きあがるので、別に安いお肉でもいいと言えばいいんですが、ここで敢えて高級肉をチョイスすることで何だかすごく贅沢気分に浸れます。
まだ夕日が完全に沈む少し前から炭に火を起こす。
時短で済ませたいときは文化焚き付けでササッと火起こし。
みるみるうちに炭に熱が伝わり、黒く大人しかった炭が真っ赤に燃える。
うちわで風を送ると。ピキピキと高い音を立てながらその赤さを増していく。
この工程を見るのが好きで、もしかすると食べるよりもこれが目的でわたしは七輪を買ったのかもしれないとさえ思います。
辺りがすっかり暗くなると、そこは赤く燃える炭の明かりだけで。
それをぼんやり眺めているのも、なんだか癒されます。
実は、わたしが子どもの頃にも家に七輪がありました。
父親が「七輪で焼いたサンマを食べたい」と言ってある日買ってきたのです。
それまで見たことがなかったわたしと弟は興味津々。
ひとりで不機嫌そうにしているのは毒母です。どうやら毒親の特徴らしいんですけど、レジャーや娯楽で子どもたちが楽しむ様子に嫌悪感を抱くんですよね。
おそらく、貧しかった自分の子ども時代と比較しているのだと思います。
「お母さんは苦労して育った。遊ぶ暇もなかったんだから!アンタ達だけ遊ぶなんてそんなの許さない!」と事あるごとに怒鳴ってましたね。
どうやら七輪もそこにカテゴライズされてしまったようです。まあ、生活必需品ではありませんし。
また、普段は家事をいっさい手伝わないクセにこんな時だけ張り切ってサンマを焼く夫にもイラついていたのだと思います。
サンマは香ばしくいい色に焼けました。身はふっくらと柔らかく、魚焼きグリルで焼くよりずっとおいしい。
「やっぱり炭火は旨いなあ!」と珍しく上機嫌な父親に対し、「4人家族なのに2本だけ焼いたって意味ないわ!それに時間がかかりすぎる。こんなの待ってられない。2度とやらなくていい!」と吐き捨てる毒母。
一気に空気が重苦しくなりました。
「せっかく子どもたちを楽しませてやろうと思って買ってきたのに台無しだ。」と怒り出す父親に、
「こんなもので楽しんだって意味ない!宗教よ!宗教をやるのが本当の幸せなんだから!」と怒鳴り返す毒母。
そしてケンカが始まります。
なんていうか、もう宗教とか関係ないです。単にふたりの性格が合わないだけ。
そしてそれ以来、父親が七輪でサンマを焼くことはありませんでした。
こんな感じであまりいい思い出がなかったので敬遠していたのですが、
なんとなく懐かしくなって買ってしまいました。
なんでこんな小さな道具一つであそこまで激昂できるのかなぁ。
燃え盛る炭を見ながら、七輪には何も罪はないよなあ、狂っていたのは親だったんだなあと納得し、上に上がって消えゆく煙と共に忌々しい記憶も空へと吸い込まれていくのでした。
さて、今年はまだ出番がありません。
やろうと思った日に限って雨が降ったり、絶好の七輪日和なのに仕事でヘトヘトだったりと、タイミングが合わないのです。
熱帯夜になるともう火を起こす気力がなくなってしまうので、できればまだ夕方に気温が少し下がる今のうちにやってしまいたい…。
日中あまりに暑いと、もう夜に肉を食べるスタミナさえ残らなくなってしまいました。
若い頃は「こんな暑い日は夜に肉を食って明日に備えよう!」とか言って友達と集まってたものですが、今となっては「あー素麺とキュウリの漬物食べて早く寝よう」としか思えない。悲しいですね。
なんとしても、近いうちに一度は七輪で火を起こします。
パラソル買って昼間にひとりでやろうかな。
感謝日記
ずっと欲しかった品物が格安で手に入った。
今日もごはんが美味しかった。
仕事が順調に済んだ。