かなり長いこと使用した革のショルダーバッグがいよいよダメになってきたので手放すことにしました。
わたしはお気に入りの物とお別れするとき、「ありがとう、おつかれさま」と声をかけてから処分します。
いつからそうするようになったんだろう。
なんとなく記憶にあるのは、モデルのはなさんが雑誌のインタビューで「携帯電話が役目を終えるとき、”ありがとう”と声をかけます。」と話していた記事。
当時はまだ携帯電話が普及してそれほど経っていない頃で、ほとんどの人が自分の機種が何台目かを言えた時代でした。
今ほど高価ではなかったのでわりとみんな気軽に買い替えることができ、5~6台目くらいの人が多かったころだと思います。そんな中ではなさんは「わたしはまだ3台目です。物を大事に使うのが好きなんです。」と答えていたんですよね。
ちょっと考えさせられました。新機種を持つことがオシャレだとは限らないんだよなあ、と。
とはいえこのご時世、ガジェットに関しては必ずしも古い物が良いとも言い切れず難しいところではあるのですが。
とにかく、この記事を読んだわたしは「自分は、最後にありがとうと言いたくなるほど愛着のある物を選んでいるだろうか。」と考えるようになったのです。
いや、どちらかといえば新しい物やオシャレな物が世に出るとそれを手に入れることに夢中になってしまい、今ある物に対して「これがあるせいで新しい物が買えない」という、多少苦い思いまで抱いていたかもしれない。
よくない。これはよくないぞ。
そうは言っても当時のわたしにはこれがけっこうジレンマで。
そりゃあ、納得して選び抜いた一品を大切にしたい気持ちはあります。
だけどその選び抜いた品を買うだけの余裕がない。妥協するしかなかったんです。
家電にしろバッグやアクセサリーなどの服飾品にしろ、本命を横目で見ながら二番手三番手を買う悔しさ。そう、買う時から既に悔しいんです。不健全だなあと分かってはいるものの、先立つものがないのだからどうしようもない。
そして、さらに追い打ちをかけていたのは「自分に上質の物は必要ない」という考え方。
本革のバッグを買ったところで手入れの仕方もよく知らないし、コーディネートもよくわからないし、自分が身に着けたって宝の持ち腐れにしかならないよ…そんなふうに決めつけていたんですよね。年月を経てやっと少しずつ変化できましたけど。
自分に上質のものが似合わないんじゃなく、「上質の物を身に着けると、それに見合う自分になるよう成長できる」ということも徐々に理解できるようになりました。
素敵な時計を身に着けると、なんだか背筋がシャンとする。
美しいパンプスを履くと、シャキッと歩くようになる。
ああそうか、だから役目を終えるときに「わたしを成長させてくれてありがとう」って思えるのね。
納得がいくようになってから、欲しいものを選ぶときは時間をかけるようになりました。その間にお小遣いも貯められるので予算の幅が広がり一石二鳥。
そうやって買った物の中のひとつにスタンスミスがあります。何度もお店に足を運んで試着して選んだ一足だから、大事に履きたいし活躍させたい。
なので、他のメーカーの白いスニーカーを見ても特に購買意欲は湧きません。今あるスタンスミスを大事にしたいという気持ちの方が強いです。
服のコーディネートの幅を広げてくれた一足でもありますから、この靴とお別れするときは思いを込めて「ありがとう、おつかれさま。」と言えるような気がします。
もちろん、今でも買い物で失敗することは多々あります。結局はムダ遣いになってしまったものもたくさん。それでも以前よりはマシになったんじゃないかな。
こういう失敗を積み重ねたことで分かったこともたくさんあるし、それはそれで必要なミスだったんだと思います。
実は化粧品でも同様で、底が見えるほど使い込んだアイシャドウなんかはやっぱり「ありがとう」と一声かけてから処分。発色とか伸びとか、これを使って感激したことがたくさんあるなぁなんて思いながら。
そうやって「ありがとう」が言えるものが増えていくと、今度は逆に物を減らしたくなります。無価値なものに囲まれたくないという思いが強くなるのかもしれません。
もしかすると人間関係も同じかもしれませんね。若い頃は友人知人をひたすら増やしていましたが、今は出会いの機会ひとつひとつを大切にしています。長く付き合っている友人たちとの絆にも「ありがとう」の気持ちがあるから、決して雑な扱いはしたくない。だから贈り物をしたくなるのかしら。思考は繋がっていますものね。
以前にも書きましたが、感謝の気持ちの効果は思いのほか大きく、ムダ遣いの防止に役立ったり自己肯定感アップにも一役買ったりします。
感謝のサイクルが自分の中でうまく循環するよう、これからもいろいろ試してみようと思います。
感謝日記
次に大切にしたいショルダーバッグが遂に見つかった。
メルカリで出品したものにいいねがたくさんついた。
店内で困っていたら店員さんが親切に助けてくれた。