30日間チャレンジブログ

40代主婦が綴る小話。

尊敬できる上司

わたしの人生の中で、尊敬できる上司はたぶん片手で数えられるほど。
なんていうのかな、人として尊敬できる友人や仲間はもっといますけど、「上司」でくくるとそんなにいない気がする。基準が厳しいのかしら。

 

どの上司にも共通して言えるのは、「人を褒める」「具体的にアドバイスしてくれる」この2点。

上っ面で褒める人はたくさんいます。理由は、辞めてほしくないとか仕事を押し付けたいなど、つまりはその場しのぎ。動機の根底にあるのは「自分のため」。
わたしの宗教の幹部もそんな感じです。「自分のような立場の者は他人を褒めなければいけない」という義務感がベースになっています。

そういう人たちの誉め言葉はどこか上滑りしていて的外れなので、言われても全然嬉しくありませんね。「この人どこ見てんだろ」としか思えません。

 

対して、尊敬できる上司は誉め言葉にプラスして具体的なアドバイスをくれます。

以前派遣社員として働いていたコールセンターで、東京本社からきた上司がわたしの横に立ちました。
「笠井さんはお話の仕方が柔らかくていいね。言葉遣いも丁寧だね。」
「ありがとうございます。でも全然売れないんです。」
「そうだね。もうちょっと図々しくなってみようか。もう少しだけ図々しいオバチャンになってみようよ。電話してるときだけでいいから。仕事のあとは元の笠井さんに戻っていいから、今だけ少しオバサンになろう。ね?」
わたしの心の中で何かがストンと落ちました。
自分に足りないものはそこだったんだ。なんだ、そういうことか。

もしここで「もっと押して」とか「もっと粘って」と言われても、押し方が分からないわたしはきっと出来なかったと思います。でも、オバチャンなら頭の中ですぐイメージできます。関西弁で「ええやん。買っとき。」と人のカゴに商品入れちゃうもじゃもじゃパーマのオバチャン。

ああいう人を演じながら話せばいいのか、なんて考えながら電話をかけると…。
売れたんです、あっさりと。
ブースには100人近いオペレーターがいるというのに、すぐに気付いて来てくれる上司。
そして「やったじゃん!良かったね!ちょっとリーダーさん!笠井さんの成績ちゃんとつけてあげてね!」と手放しで喜んでくれたのです。

わたしの売り上げが会社の利益につながるので、結局その上司も自分の会社のために褒めてくれているんですが、それが分かったとしてもこれは嬉しい出来事でした。
単に会社の利益になるだけでなく、わたし個人のスキルアップにもつながるアドバイスだったからだと思います。

 

そもそも、その上司はオペレーターの指導のために来たわけではありませんでした。
もっと重要な要件があり、ついでにブースに立ち寄っただけです。
本来オペレーターの教育はその場のリーダーやスーパーバイザーの仕事ですから、ほとんどの上司が「ちゃんと教育してよー」とだけ言い放って去って行くのがふつうです。

だけどこの上司はそうじゃなかった。自分の会社や仕事に対しての真剣さが伝わってきました。だからこそ誉め言葉もアドバイスも活きたものになったのだと思います。

 

それからしばらく経ち、コールセンター内で業務が変わってわたしはもっと少人数のチームで商品の販売をすることになりました。
クライアント先の上司がやってきて商品についての講習をし、わたしたちのトークも細かくチェックします。
ある時やってきたのは、クライアント先の副社長でした。電話営業の経験も豊富な方でアドバイスも容赦がありません。
オペレーターの会話が盛り上がってくると、サッと横につき一緒に通話を聞きます。
次に言うべきセリフを耳打ちして会話を誘導して販売につなげる手腕は見事なもの。
通話が終了すると、「あのトークのここが良かった。でもここがまずかったね。だからわたしが次のトークを囁いたの。どこが良くなかったか、自分でわかる?」と、マンツーマンで研修をするほどの熱心さ。

相変わらず売り上げの低いわたしは一体何を言われるのだろうとヒヤヒヤしていたのですが、横で聞いていたその副社長はひとこと「うん、いいね。」。
ぶっちゃけその時は売れなかったんです。お客様が「今すぐには決められない」と言うので、次のアポを取り付けて、それまでに考えておいてくださいとしか言えなかったのに。
「あのトークの流れは良かったよ。今日はあれ以上押しても売れなかっただろうし、最悪断られる可能性もあったからね。今のトークならまだ可能性はあるから。」
なるほど、そういうことだったんだ。
その日の売り上げばかり気にして後日の可能性なんか考えない上司もたくさんいるというのに、この方は長期的な視点を持っているんだなと素直に感心してしまいました。

尊敬できる上司というのは、心のどこかに余裕が必ずあります。
わたしもぜひ見習いたいものです。

 

感謝日記
良いお客様と巡り合えた。
お弁当がおいしくつくれた。
友人と楽しいメールができた。