30日間チャレンジブログ

40代主婦が綴る小話。

真夜中の社会見学

うんと昔、まだわたしが20代だった頃の話。

 

当時は家族という単位が大嫌いで、とにかく家に寄りつきたくありませんでした。

お金を貯めて少し離れたアパートで友達とルームシェアを始めたときは本当に嬉しかったのを覚えています。

 

子どもを支配し縛りつけるのが趣味だった毒母は、夜に徒歩5分のコンビニへ行くことすら許してくれませんでした。なもんで、当時のわたしは世間が深夜に一体何をしているのか興味津々。

実家を出て門限もなくなったのですから、これはもう行くしかあるまいと、友達を誘ってさっそく夜の街へ繰り出しました。

メイン通りに面した店は、いわゆる健全なごく普通の居酒屋ばかり。こじんまりとした大人の雰囲気の店もあれば、子連れOKのファミリー居酒屋もあります。

当時の20代に人気なカフェバーへ行き、ノリの良いお兄さんにカクテルを勧められるもののウーロン茶しか飲めない場違いなわたし。

シラフで店内をジロジロ観察していましたが、誰しもが上品にお酒を嗜んでおり、思っていたより普通で驚いたのを覚えています。

「父親のようなタチの悪い酔っぱらいはこういう所には来ないんだな…」と、なんの足しにもならない教訓を得てまた外へ。

 

老舗の小料理屋などがたくさん入っている雑居ビルへ近づくと、見覚えのある動きをしているおじさんがあちこちにいます。千鳥足だったり大声で喋ったり、小競り合いをしたり殴り合いをしたり。

これこれ、こういう雰囲気。うちのアル中みたいなおっさんがたくさんいるわー。

と、妙に懐かしく居心地の良い思いをしたのが今でも鮮明に残っています。

場慣れしていない友人はずいぶん怖がっていました。

「ねぇ、こんなところにいたらケンカに巻き込まれちゃうわよ。危ないんじゃない?」

「大丈夫、大丈夫。」

もちろんわたしだって場慣れなんかしていないけれど、でもここは5歳くらいに父親と来たことがある場所で、どうしてなのかは分からないけれど絶対安全にすり抜ける自信がありましたし実際無事でした。ナンパすらされなかったので、空気にすっかり溶け込んでいたのかもしれません。

 

予想以上に平和な夜の街に拍子抜けしながら店をハシゴし、最後は24時間営業のファミレスに入り時間を潰します。

お喋りに花を咲かせているうち、だんだん夜が明けて空がうっすら白くなり始めました。

「そろそろ出ようか。」と一歩外へ出てみると。

仕事を終えたホストたちがフラフラになりながら歩いているのが見えました。電柱に寄りかかって寝ている子、歩道で寝転ぶ仲間の腕を引っ張る子、ビルの谷間で吐いてる子。そして、そんな彼らを尻目に颯爽とバイクで駆け抜ける新聞配達のお兄ちゃん。

1日を終えた人とこれから1日が始まる人が交差する瞬間は、言葉にし難い面白さがありました。

街って眠らないんだなぁ。

そんな呑気なことを考えながら帰途に着いたのを覚えています。

 

夏の寝苦しい夜はいつもその時のことを思い出すんですよね。体力があればまた出かけてみたいものだけど。

そういえば、ナンパはされませんでしたが古めかしい喫茶店のマスターがなぜかバナナをくれました。古いカウンターでジャズを聴きながら頬張るバナナは美味しかったけれど出されたコーヒーとはあまり合っていなかった気がする笑。

 

 

感謝日記

たっぷり睡眠を取れた。

多忙の友人におかずの差し入れ

仕事がひと段落