30日間チャレンジブログ

40代主婦が綴る小話。

70歳の騎士

あれ?!

予約投稿の日にちを間違えてしまいました。

10/19の分が抜けていることに今気づいた。

連続投稿の記録が崩れてしまったー残念!

楽しみにして下さっている方…(いらっしゃるのだろうか)…ごめんなさい。

 

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さて、おおむね職場環境に恵まれているわたしですが、ごく短期間だけイジメのある会社にいたことがあります。そんなに凄惨なものではありませんが。

小さめのコールセンターで働いていた頃、上司に呼び出され部署を異動することになりました。

途端に同僚から「えっあの部署?!大丈夫?」と心配する声が。

一体何が大丈夫なのか尋ねると、「知らないの?あそこはイジメがあるんだよ。牛耳ってるお局がいてさ。わたしもやられて嫌になって、上司に頼んでこっちに変えてもらったんだもの…。」

どうやら有名な話らしく、「わたしもやられた」とあちこちから聞こえてきます。

「どうしてイジメられるんですか?」

「そんなの決まってるじゃない。妬みよ、妬み。わたしはあの部署に入った初日にいきなり売上1位を取っちゃってね。たぶんそれを恨んでたんでしょ。」

「だったらわたし大丈夫ですよ。成績悪いじゃないですか。」

「バカね、成績だけじゃないのよ。アンタは話し方が丁寧だから多分それで反感を買うわ。」

そんな理不尽なと思ったけれど、そもそもイジメは理不尽なものだし、たとえ筋が通っていてもやってはいけません。

「ちなみにどんなイジメられ方をするんですか?」

「無視されたり大声で嫌味を言われたり、いろいろよ。ちなみにわたしは階段から突き落とされたわ。」

「えっ?!」

「あと残り1〜2段というところで背中をドンッと押されたの。アンタも気をつけなさい。」

いや気をつけるって言ったって、そもそも誰がやってるのかもわからないし。

別部署は階が違うので接点がなく、名前を聞いたところでわたしは覚えられない。

うーんと考えこむわたし。すると年長の先輩マダムからこんな助け船が。

「大丈夫。ホラ、先にここから移動したSさんに、アンタのこと守ってあげるよう言っておくから。」

 

Sさんは70代の男性で、現役を退いた後にこのコールセンターへ働きにやってきた方です。

「家にいても暇だしさ。母ちゃんもうるせぇし。」と、半分暇つぶしのように会社に通っています。

そんなモチベなものだから法律等の知識が必要なこの部署は肩身が狭かったらしく、「ここは緊張するからもっと気楽なところへ行かせてくれ」と、自ら志願して別部署へ移動していきました。

男性ということもありイジメの標的にはなっていませんが、その様子を眺めて「女ってのは怖いなァ」とボヤいているそうです。

「見て見ぬふりするマネージャー達と違って、Sさんはできる範囲で助けたいと思ってる人だから。きっと大丈夫よ。」

 

そして移動日。さすがに初日からイビられることはなかろうと思っていたら甘かった。

1年の大半を東南アジアで過ごしており、その旅費を稼ぐためコールセンターで働いているわたしの特殊なライフスタイルは既に別部署でも知られており、結果、

「英語が話せる人って羨ましい〜!わたしも話せるようになりた〜い!誰かに教えてほしい〜!」と、ドアを開けた途端にブースのどこかから嫌味ったらしい口調が飛び込んでくる有様。これ絶対返事しちゃいけないやつ…。

トホホと思いながら席を探していると、「アンタ、こっちこっち!」とわたしを呼ぶ声。

「席を取っといてやったよ。ここに座んな。」

そう、かのSさんが早くブースに入りわたしの場所を用意しておいてくれたのです!

「話は聞いてるよ。オレはいざこざに無関係だからここにいれば大丈夫だ。巻き込まれるこたぁないよ。」

なんて頼もしい…!!

「もう分かってると思うが、さっき大きな声でなんか言ってたあの人が元凶だ。オレは揉め事が嫌いだからあの人と喋るよ。気分良くさせておけば面倒なことにはならないから、アンタはできるだけ黙ってな。」

と、小声でヒソヒソとアドバイスをくれるSさん。

こういうところは年の功というか、経験豊富な方は余裕が違いますね。

人を見極めるのが早いし的確。どうするのがベストかもわきまえてる。

現役時代はかなり大きな会社で人事も勤めていたそうなので、人間観察にも長けているのでしょう。

「Yさんがここでイジメられたのは、あの人目立ちすぎたからなんだよ。ホラ、金があるからいつもヴィトンやらグッチやら持ってくるだろ。あれが気に障ったんだろうね。」

YさんというのはSさんに事情を伝えた先輩マダム。階段から突き落とされた方です。

確かに、防寒用と称してヴィトンのカシミヤストールを持ってきたりシャネルのイヤリングをつけていますが、ゴージャスぶりがイキ切っていてむしろ清々しい。

でもまあ、それを自慢と捉えて反感を抱きイジメられるのも有り得る話です。

「とにかく大人しくしてりゃいいんだよ。」

Sさんのアドバイスに倣い、契約満了まで存在感を消して仕事をこなすわたしでした。

 

Sさんのフォローは見事なもので、わたしとシフトが被る日は必ず席を隣に取っておいてくれるし、業務の合間の雑談もほんと上手。イジメっ子が業績を上げた日は誰よりも目ざとく「さすが!上手いなァ」と褒めちぎる。

なんというか、スキがないんですよね。わたしを庇ってくれているのも、イジメが怒らないよう場の空気を作り出しているのも明らかなんだけど、それを突っ込む隙がないので雰囲気に乗るしかないんです。イジメっ子も常に何か言いたげだけど、どこでそれを言えばいいのかタイミングを掴めずにいるといった様子でした。

いや、お見事。

誰かに守られるなどというお姫様みたいな経験をしたのはこれが最初で最後です。

姫を守る騎士(ナイト)ってカッコいいな…!

 

素敵な方だったけれど、70代はわたしのストライクゾーンではないため何も芽生えませんでした。

人によってはロマンス案件だったかも…?

 

感謝日記

新鮮な野菜が手に入った。

入院していた親族が無事退院。

断捨離が順調に進んでうれしい。