30日間チャレンジブログ

40代主婦が綴る小話。

記憶②

たしか中学生、もしくは高校に入りたての頃。

 

父親が友人を連れて帰宅しました。いつものように酔っ払って。

友人を連れているせいかこの日は上機嫌で、家でもさらに酒を飲み始めます。ビールだったか日本酒だったか、もう覚えていないけれど。

本当は早く部屋に戻りたかったわたしですが、寝るにはまだ早い時間だったし、お客さんが来て早々に部屋へ逃げ込むと「失礼だ!」と父親が豹変するので仕方なく茶の間で待機。

 

父親の友人はわたしを見ながら子育て論を始めました。父親も機嫌良くその話題に乗ります。まぁ酔っ払いの語りなんてあまり中身がありませんけど、当人たちは立派なことを言っているつもりのようです。

そこへ何を思ったのか毒母が会話に参加し始めました。

「子育てには適度に叱って懲らしめるのが大事なんです。わたしは親の威厳を見せるように教わっています。」

なんと宗教の教えをここで説こうとし始めます。これには本当に驚きました。酔っ払い相手に宗教の勧誘をするつもりなんだろうか。え、なんでそんな無意味なことを???

父の友人はそんなことには全く気づかず話を続けます。

「親の威厳を見せるってさ、なかなか難しいよなァ」

「子どもが悪いことをした時に罰を与えるのがいいんですよ。」毒母は大真面目です。「わたしは子どもたちのお尻を叩いて懲らしめています!」

 

本当にこの女は愚かなんだとこの時心の底から悟りました。この雰囲気で「お尻を叩く」なんて言ったらどうなるか、ちょっと考えればわかりそうなものなのに。

 

案の定、その友人は四つん這いになってクルリと後ろを向き、自分の尻をこちらに突き出しながら言いました。「じゃあボクのお尻もペンペンしてくださァ〜い」

 

父親はそんな友人の姿を見て笑っています。

母親は「そうですよ!しっかり叩かないと躾になりませんからね!」とまだ大真面目に語っています。そしてこちらを見るなり「アンタもいつまでここにいるのさ!もう寝なッ!」と鬼の形相で言い放ちました。

 

混乱しました。

大人の下品な姿を見せられておまけに叱られるって、一体何なんだろう。

ものすごく気持ちが悪かったけれど、この気持ちは自分で処理しなければダメなんだろうな。

というか、父親も母親もわたしを守るようなことはしなかったから、大人の世界ではこれが普通なのだろう。

気持ち悪いなんて思う自分が潔癖すぎるのかもしれない。

そう考えて封印しました。誰にも話したことはありません。

わたしの記憶の中だけで、小太りのおじさんが今もこちらに向かって尻を振り続けています。

 

今この歳になってあの光景の異常さが分かってきました。

「子どもの前でやめてください」と、たぶんわたしなら言うと思います。

それとも世間の常識は違うのかしら。

酔っ払った男性の尻振りを見せつけられるのは当たり前なのかな?

 

毒母はこの話を何一つ覚えていません。彼女にとってどうでもいい記憶なのでしょう。