夫婦はふたりで一緒に時を過ごさなくてはならない。
気づけばそんな常識がだいぶ前から存在していますけど、そうとも言い切れないようです。
これ以前にも書いたと思うけど。
夫婦双方が自分ひとりの時間を大切に過ごすからこそ、ふたりで共にいる時間も大切にしようと考えられるのだとか。
めちゃくちゃわかります。
1日24時間のうち、20時間くらいは独りでいたい。
残りの4時間は部屋に夫がいてもストレスなく過ごせて、会話はそのうち1〜1時間半あればじゅうぶん。
他はどうか知りません。わたしはこれがちょうどいいよってだけで。
1日1時間の会話となると、もう必要なことしか喋らないんですよね。
女装したおじさんが職場にやってきた話とか、
ヤクザと癒着して犯罪を見逃す警察の話とか、
コロナ禍でドイツ留学したら物価の安さに驚いた同僚の話とか、
つい「へぇ〜」と言ってしまいたくなるちょっと面白い話をしたい。
誰かの悪口やただの噂話に時間を費やしたいとはあんまり思わない。
結婚して20年ぐらい経つんですけど、今はこれで落ち着いています。
このバランスを取れるようになるまではそれなりのストレスがありました。
全然一緒にいたくないけど側にいた方がいいのだろうかと考えて身の回りの世話をちょこちょこやるのですが、これがちっとも面白くない。
家事をやるのはいいけれど、自分のペースでやりたいなーなんて。
そんな折、仕事で出張しなければならない用事ができました。期間は3泊4日。
打診の電話をもらったときは、興奮のあまり被せ気味に「行きます行きます」と即答してしまいました。
「いや、返事は急いでないから先にご家族に相談してからでも…」
「大丈夫です、ぜひお願いします。」
「でも3泊は長くない?調整して1泊とか…」
「いえいえ3泊しますよ、お任せください頑張ります!」
「そ、そうかい?そういうことなら、まあ、今からホテル取るけど。」
今にして思えば担当者が引いていたような気もしますけど、そんなことは問題じゃない。
重要なのはわたしのひとり時間の確保なのです。夫からのしばしの解放なのです。
「そういうわけで出張が決まったよ。」
「えっ。食事とかどうしたらいいの。」
「なんか適当によろしく。」
途方に暮れた夫は休みを取って親の顔を見に実家へ行ってました。
親孝行になって良かったんじゃないでしょうか。
さあて、束の間の自由の身!何しよう?って、基本は仕事なんだけど。
会社がビジネスホテルを取ってくれたのでそこに宿泊します。
着いてから知ったのですが、夕飯はカレーライスを提供してくれるとのこと。
「それ以外のものが食べたければ外へ行ってください」と言われましたがとんでもございません。
仕事から帰って座ってるだけでカレーが出てくるなんて至福の極みじゃないですか。ありがたく3日間いただきました。
朝食は近場のコンビニのイートインで軽くサンドイッチなどを食べ、ランチは仕事場周辺の食堂などを利用。
出張中は一度も夫に連絡をせず、好きなテレビ番組を見て好きなだけ風呂に浸かる。
仕事の後はドンキホーテに立ち寄って、時間を気にせず店内をウロウロ。
夕食後に小腹が空いたらホテルを出て近所の居酒屋で焼き鳥をつまむ。下戸なのでウーロン茶しか飲めないけど。
いや〜楽しい!極楽極楽!解放されるってこういうことを言うんだわ。
無事に仕事も終え、ホテルのチェックアウトも済ませて帰路へ。
列車で揺られながら頭が主婦モードに切り替わるのをじわじわと感じる。
家に帰ったら洗濯して、荷物を片付けて…そういえば冷蔵庫に入れっぱなしのちくわの賞味期限は切れていないかな。まだ大丈夫だったら明日はちくわの炒め物にしよう。
冷凍保存している野菜がまだあるから、明日は買い出しに行かず片付けと掃除だな。
久しぶりの主婦モードで、なんだか頭も良く動く気がします。
先に帰っていた夫の洗濯物が既に溜まっていたけれど、それもさほど気にはならず、むしろ気合が入ります。
そこでしみじみ、「主婦にも休みって必要だよなあ」と思ったわけです。
休みと言っても寝坊をしたいとかそういう意味ではなく、ただシンプルに家事から解放されたいだけ。そしてひとりの時間を過ごしたいだけ。
誰のためでもない、自分のために24時間使える幸せを味わいたいだけなんですよね。
だけどそれがなかなか難しい。
それが結婚というものだと言われれば確かにそうなんですが、若い頃にそこまで見越して決断できる人が果たしてどれほどいるのだろうか。
実際のところ、友人のお母さんはモラハラ夫が老衰で亡くなったとき、思わず「解放された!」と叫んだそうです(笑)。別の知人も夫亡き後「これからはやりたかったことを全部やるわ!」と張り切ってました。
でもほら、シニアになってからだとできることが限られてくるじゃないですか。
なのでわたしは、今から少しずつおひとりさま時間を確保しているわけで。
今度の休みはどこへ行こうかな。