30日間チャレンジブログ

40代主婦が綴る小話。

アヒルと鴨のコインロッカー読了(ネタバレなし)

読み終わりました~。

仕事の追われてぐったりと家に帰り、一息ついてから「さあ、読むか」といった感じであまり余裕はなかったのですが、それがかえって良かったかも。

 

あとがきによると作者は「地上から数センチ浮いたような作品」を書くとのことだったのですが、まさにそれ。
どこかファンタジーな雰囲気を醸しており、おかげでイラついたことや大変だったことをすっかり忘れて物語に入り込める不思議な作品。

 

ブータン人のドルジが非常にいいキャラクターで描かれています。
わたしはブータン人に会ったことはないけれど、ネパール人やバングラディシュ人、インド人とは交流を持ったことがあり、その素直さや人懐こさはなんとなくドルジと雰囲気が近いように感じました。

彼らは死に対する考え方や受け止め方が日本とかなり違い、あまり恐れていないというか人生の流れの一部として受け入れているような気がします。

それは死だけでなく行動についても同様で、「今これをしたら後で悪い評判が立つかもしれない」といった将来の不安への予測を、日本人ほど深くしていないようにも見える。

ドルジの行動にも似た部分があり、いつもその瞬間に自分が納得できる行動を取っているシーンがちょくちょく出てくる。

自暴自棄になっているわけではなく、誇りと意識を持って行動に移している。責任感はあまりない(笑)。

それはたぶん、「将来周囲からどう思われるか」ではなく「来世の自分に恥じないため」なんじゃないかな。

 

そんなドルジの生き方や考え方に近いのが河崎。少々日本人離れした感性の持ち主で、おかげで元カノの琴美ちゃんからはずいぶん嫌われているようだけど、それが河崎の生き方なのだから変えようがないわけで。自分に素直な自由人で、やはり周囲の目をあまり気にしない人。差別も偏見も持たない個性的なキャタクターとして描かれています。

 

琴美ちゃんはけっこうブレていて、臆病になったり大胆になったり振り幅がかなり大きい女の子だな、と感じました。若い時はそういうものかもしれませんね。
自分にないものを持つ人に憧れて影響を受けて、でも本来の臆病で保守的な自分もすぐには変えられなくて、そのせいで口だけは達者だし素直にもなれない、みたいな。

 

語り部の椎名も成長真っただ中の大学1年生。読み手はこの椎名の目に映るものを中心に物語を見届けるといった感じです。

 

トリックもすごく巧妙でお見事なんだけど、それよりも話の内容がグッときます。

「こんな生き方もあるんだよ、こんな考え方もあるんだよ」という呼びかけをバックグラウンドにひしひしと感じ、もしかして作者が本当に言いたいのはこっちかな?と思うほど。

 

読み終わったとき、もうこれで主要キャラ3人とは会えないんだと思うとすごく寂しい気持ちになりました。

この本に限らず、登場人物が魅力的な小説や漫画、映画をみた後はいつもそう感じます。

彼らの今後を見届けたいのに、それができないのが切ない。

そう思わせる作品でした。読めて良かった。

 

そして読み終わったあと、何年も前に出会って仲良くなったネパール人たちの顔を思い出しました。彼らは元気でやっているんだろうか。今もニコニコしてるかな。

 

彼らの笑顔や考え方にまた触れたいと思っている自分がいることに気づきました。

日本人が何も思わないようなところで怒ったり怯えたり、日本人同士ならすぐバレそうな嘘を平気でついて騙したり騙されたり。それが彼らにとっての常識であり日常で。

ネパール人に限らず世界中にそういう常識や環境があるわけで、そう考えるとやっぱり見に行きたくなります。世界の裏側の人たちは何を考えて今を過ごしているんだろうと思うし知りたくなる。

 

ここ2年ほど忘れかけていた、旅への意欲を思い出させてくれる作品でもありました。

 

次は何を読もうかな。

叙述トリックのおすすめが載ったブログでは「殺戮にいたる病」も紹介されていました。でもちょっとグロ描写が激しすぎる予感がして本を借りる前にネタバレを読んでみたのですが、うん、これは読めない(苦笑)。エログロに耐性がないと叙述トリックまで気が回らないかも。

気になっているのは「十角館の殺人」。本を借りたいのですが人気で予約人数もかなりいます。

電子書籍で買おうかどうしようか、悩み中。

 

感謝日記
Amazonタイムセールで狙ってた商品が安くなってた。
辛ラーメンのアレンジレシピが美味しかった。
プミラが増やせそうなくらい元気に育ってる。