30日間チャレンジブログ

40代主婦が綴る小話。

地獄を見たければ、アルコール依存症者のいる家庭を見よ

欧米にはこんな物騒な言葉があるそうですね。わたし最近知りました。

ついでに自分が地獄育ちだったんだってことも知りました。

 

住めば都とはよく言ったもので、地獄も慣れればパラダイス…とまではいかないけれど、まあ、それなりに住めます。

居心地は悪いですよ?快適さのカケラもありませんでした。なので、学校から真っ直ぐ家に帰るのが嫌で嫌でどうしようもなく、勉強が分からないとか友達の掃除を手伝うとか、何かと用事を見つけては学校に居残る子どもでした。

学校にいるほうが伸び伸びできたんですよね。家ではタバコの煙が霧のように立ち込めているし、それにイラついた母親がわたしに八つ当たり。

「学校から戻ったらさっさと手伝いな!アンタが遊んでた間、お母さんはずっと仕事してたんだから!」

学校へ遊びに行っていたと思っていたようです。まあハズレてはいないけど。

家の中で「暑い」と言えば「子どもが暑がるわけない!お母さんは家事をやってもっと暑いんだ!」と怒鳴られるし、
学校から戻って「疲れた」と言えば「子どもが疲れるわけない!こっちはずっと家にいてもっと疲れてる!」と叱られる。

それを聞いていながら無視してTVを見続ける父親。

おそらく父も居心地が悪かったのでしょう、仕事帰りには必ず飲んで帰るようになり、夜中の2時ころにベロベロに酔って帰宅し母親へ文句を喚いてました。

どういうわけか風呂場で喚くので、エコーが無駄に響いてめちゃくちゃウルサイ(笑)。
そこにキレた母親が風呂場のドアを開け、朝方まで言い争う。

365日中、250日くらいはこんな生活をしてました。言われてみれば確かに地獄ですな。

泥酔で帰宅するのはまだマシで、ケンカして血だらけで帰ってきたり骨折したり、初対面のオッサンを連れて帰ってきたりしてました。

10代の頃、朝起きてわたしがひとりでリビングに行くと見知らぬ男性がパンツ一丁で寝転がっていたのには驚きましたね。タイミングが悪ければ襲われていたかもしれない。
今思い返すと戦慄ですが、当時はそういう出来事が多すぎて麻痺していたような気がします。

 

身体的な暴力はありませんでした。
「暴力を振るって跡が残ると警察沙汰になるからしない。」と、両親共に口を揃えて言っていたので、子どものためというより自分の保身のためだったのでしょう。

そのため、「わたしは殴られないだけマシ」という底辺の思考を持つようになりました。

読んだことはないのですが、「天を見つめて地の底で」という漫画がありまして、タイトルを本屋で見たときは「わたしのことじゃん」て。

自分の場所が地獄だという感覚はなかったけれど、なんとなく底辺にいることは自覚していたのかもしれません。

 

愛や愛情が流れない家庭の中で行き交うのは、言葉の暴力や支配力。

「俺の嫌がることはするな!」という父親と
「わたしがこの家でいちばんワガママだ!言う事を聞きな!」という母親。

どちらも王様、女王様でいたかったのでしょう。
自分の力を見せつける対象が子どもしかいなかったので、「子どもなんか親の奴隷だ!」とよく言われました。
愛で人を動かすよりも、権力を誇示して他人をコントロールすることに喜びを感じるタイプの人種です。

 

自分のストレスやフラストレーションを自分で解決することができない父親はますますお酒に逃げるようになり、飲み屋で起こすトラブルの尻ぬぐいはいつもわたしたち。

給料がそっくり入った財布をお店に忘れたり、二日酔いで車の運転をして警察につかまったり、人身事故を起こしたり、会社にも迷惑をさんざんかける日々。

 

電話もよく鳴ってましたけど、会社の人も警察もわたしたち子どもには優しく接してくれます。

「こんにちは。お父さんの会社の者だけど、お父さんはまだ寝てるかな?」
「こんにちは。警察だけど、お父さんと代わってもらえるかい?」

口調は確かに優しいんですけど、ほら、こんな環境の子どもはたいていHSPですから、わかるんですよ。声の奥にある憤りや呆れといったものが。

あれが本当に怖かった。

怖いが故に、混乱するんです。

この人たちの怒りの感情が怖い。だけど父親が正しいとも思えない。

もしかすると、わたしが父親を起こさなかったから会社の人が怒っているのかな?

もしかすると、わたしがお酒を止めさせなかったから警察の人は怒っているのかな?

謝ったほうがいいんだろうか。でも、わたしも怖い。この家が怖い。

本当は「助けて」って言いたいけれど、弱音を吐くと母親に叱られていたためその言葉が口から出ない。

 

ずっとそうやって生きてきました。

なんというか、その生き方そのものが地獄というより、それを地獄と思わない感覚が自分の中で根を張っているのが地獄。ちょっとややこしいかな。

 

理解はしなくていいと思います。共感も特にしなくていいんじゃないかな。

ただ、たまに「そんなの地獄じゃないわよ。わたしのほうがもっと大変だったんだから。」という人が現れます。

そういう方には「じゃあ、代わってくれる?わたしの子ども時代をそっくりあなたにあげるって言ったら、全部引き受けてくれる?」と意地悪を百も承知で聞き返すんですけど、たいてい拒否されます。

そういうことですよね。

みんなが避けて通りたくなるような、でもちょっと気になるから遠目で「うわ~」って言いながら眉間にしわ寄せて高みの見物したくなるような、

そういうのをね、「地獄」って言うんです。

 

 

感謝日記

お弁当がおいしくできた。
安全に事故なく帰宅できた。
ストレッチを忘れずにできた。