小学校の頃、大大大好きだった本は家なき少女でした。
愛読していたシリーズは廃刊になってしまい、どうしてあのとき買っておかなかったのか、今となっては後悔しかないのですが、実は買わずに後悔した本がもう1冊あります。その名も「おちゃめなパッティ」。
「あしながおじさん」で有名なジーン・ウェブスターの作品です。
家なき少女と同じ、岩波書店の世界少女名作全集の中のひとつ。
内容は、お嬢様のパッティが寄宿舎学校で繰り広げるドタバタ学園ライフ。
お嬢様ですが淑やかさはなく、我が強くて好奇心旺盛、考えるより先に身体が動いてしまうかなりやんちゃな女の子。
学校で理不尽な課題が出されると、「それはおかしい」とたったひとりでストライキを起こします。
課題の量を減らしてほしいという要求が通るまで、飲まず食わずで教室に居座るのだから大したものです。
ストライキの最中、夜遅くまでひとりで頑張る彼女に次々と差し入れが届きます。夕食の残りのチキンとパンや、クラスメイトからのキャンディ。この描写が本当に美味しそうで食べてみたくなります。
学園内のパーティーでもパッティはおおはしゃぎするのですが、オバケの仮装で調子に乗りすぎ寄宿舎内が大騒ぎ。その場を逃げ出すパッティですが、どうしても食べたいデザートのレモンパイは死守。上のパイ生地はどこかへ飛んでいきますが、残りをおいしそうに平らげます。これがまた読んでいてすごく魅力的。
そして、この本にはわたしのその後の人生に大きく影響するエピソードが載せられています。
クリスマス休暇を寮で過ごすことになったパッティは、ある大人しい女の子と仲良くなります。複雑な家庭環境で育った彼女は、パッティが実家から届いたクリスマスプレゼントの箱を開ける様子をうらやましそうに眺めます。
「あなたはどんなプレゼントをもらったの?」と無邪気に尋ねるパッティに、「今までプレゼントなんて貰ったことないわ。わたしは愛されていないもの。」と悲しく答える女の子。
そんなある日、その子の父親が寮へ面会に来るという知らせが。
何年振りかの再会で動揺してしまうその女の子。
「父はわたしに会ったって、がっかりするに違いないわ。」
「どうして?」
「だって父は、あなたみたいに明るくて優しくて頭のいい子が好きなのよ!」
「じゃああなたもわたしみたいに、明るくて優しくて頭のいい女の子におなりなさいな。」
これを読んだとき、雷に打たれたような衝撃を受けました。
そうか、なればいいんだ、なりたいものに。
それまでわたしは、「こんな友達がいたらいいな」とか「こんなお姉さんがほしいな」など、憧れの存在が目の前に現れることを待ちつづけているフシがありました。
また、「あの子みたいに可愛くないから、こんな服は似合わない」「あの子くらい運動ができたらいいのに」と、自分にないものを持っている子たちをいつも羨ましく感じてもいました。
でも、それは間違いだったんだ。
「こんなお姉さんがいたらいいな」と思うなら自分がそうなればいい。
「可愛くないから服が似合わない」のなら、可愛くなればいい。
目からウロコでした。どうしてこんな単純なことに気が付かなかったんだろう。
お話の中の女の子はその後も駄々をこねて父親との面会を避けようとするのですがパッティはそれを許しません。ワンピースを貸したり、届いたばかりのクリスマスプレゼントの中から銀のバックルを取り外して彼女の服につけたり、どんどん気前よく物を貸して女の子を可愛らしく仕上げます。
結果、その子はお父さんと楽しく過ごし、初めての貰ったクリスマスプレゼントをパッティに見せながら「父は、わたしのことを愛してるって言ったの!」と嬉しそうに報告します。それを聞いて満足げなパッティ。
自分の物を気前よくどんどん貸してあげて、それが良い結果になったのを自分のことのように喜ぶパッティがすごく素敵でした。
わたしもそんな気前の良い人間になりたい。そう強く感じたのを今でも覚えています。
中学に上がってからその本を読むことはほとんどなくなってしまいましたが、
それでもずうっとパッティに憧れ、パッティみたいになりたいなと思いながら過ごしてきました。
なりたければ、なればいい。
大人になった今ではその難しさもよくわかりますが、当時小学生だったわたしにとってシンプルで明解で、わかりやすかったんだと思います。
最初から無理と決めつけずに「なっちゃえ」と思えるフットワークの軽さがあったんでしょうね。
ちょっと、取り戻したいような気もする。
感謝日記
今日も健康に過ごせた。
ごはんが美味しかった。
青空が気持ちよかった。