30日間チャレンジブログ

40代主婦が綴る小話。

雨の日のブックカフェ

仕事の帰り道。

シトシトと降る雨の中、「そういえばこの辺りに文学館があったな」と少し回り道。

どっしりと構えたグレーの建物に近づき重いドアをゆっくりと開けると、ふわっとしたあたたかさに迎え入れられる。

 

地元にゆかりのある作家の本が並ぶその記念館はカフェも併設しており、読書をしながらコーヒーも楽しめます。

コンセプトの中心はあくまで読書。なのでメニューはホットコーヒーとアイスコーヒー、カフェオレだけ。

 

先に入っている客は女性ひとり。真剣に読みふけっている彼女の邪魔をしないよう、小声でホットコーヒーを注文して静かに本棚へ。

奥へ進むと、地元の作家のみならず日本の文学を作り上げた文豪たちの著書も並んでいます。

なんとなく、タイトルに惹かれて手に取ったのはこちら。

 

 

相当前にさらっと読んだっきりの「カインの末裔」。

窓に当たる雨の音が、嫉妬深くて横暴で傲慢な主人公の冷たさと北海道の厳しい寒さをよりリアルに感じさせます。

 

すごく嫌な人間として描かれている主人公の仁右衛門ですが、きっと誰しもこういう一面は持ち合わせているのでしょう。

他人がこのような振る舞いをすればそれを見て眉間に皺を寄せるし、

自分が似たような態度をとる時は他人が眉をひそめている。

何百年何千年と同じことを繰り返しながら、わたしたちはカインの末裔としてエデンを追われ生きているのかも。

だからこそ、いつもどこかで楽園と呼ばれる安住の地を探し求めてしまうのかもしれません。

天国にいちばん近い島」とか「この世の楽園」とか、そういうフレーズについ魅せられてしまいますものね。

 

雨の日は読書に向いていると思います。

しっとりと落ちた雨が地面に吸い込まれていくように、文字のひとつひとつが心に沁みこんでいく。

内容が自分の養分になってココロを耕す。

もちろん晴れている日に本を読んでもいいのだけれど、雨の日の方がスーッと入っていくような気がします。

 

外の雑音が雨音で消され、静かなブックカフェが静寂をより強くする。

雨の日の楽しみ方を知っているというのは、少しお得感がありますね。

 

雨と読書の相性が良いのであれば、もちろん図書館に行ったっていいんです。わたしも行きます。

だけど、カフェってほら、食器の音がするじゃないですか。あれが好きなの。

カップをソーサーにそっと置くときの、カチャンと小さく鳴るあの音が大好き。

文学館はわりと天井が高い造りのため、小さな音でもよく響きます。でも読書の邪魔にはならず、かえって雰囲気を引き立てる演出効果があります。

自分の家ではあまり聞けない、非日常を感じる音だからかもしれません。

 

コーヒーを淹れるキッチンから聞こえる水の音や食器を洗う音もまたいいですよね。

ふだんは自分が台所に立って初めて起こる音なのに、今日はこんな遠くで聞こえる!みたいな(笑)。

 

さまざまなジャンルをまんべんなく扱う図書館と違い、文学館には置いてある本にかなり偏りがあります。

メインとなる作家の著書が網羅されているのは当然として、それ以外がアートだったり絵本だったり、宇宙だったり自己啓発だったりと、館長か主催者か誰かわからないけれど、きっとそういう上の立場の人の好みが強く出ているんだろうなと思えるラインナップが楽しい。

そういうチョイスには新しい出会いがつきもので、「こんな本があるの?」と思わず2度見してしまうようなタイトルの本が並んでいたりします。

 

最近はわたしも電子書籍を買うことが多くなりました。

保管場所を考えなくていいし、通勤電車の中でも仕事の昼休みでも、時間と場所にとらわれず好きな場所で読めるというメリットはかなり大きい。

スマホタブレットに何冊も収容できますから、荷物が増えたり重くならないのもうれしい。ほら、わたし荷物が多い人だから…。

 

でもこう、実際の本棚とはやっぱり違うんですよね。

Amazonの中でウロウロするのと、本の背表紙を眺めながら自分の足で歩くのは全然違う。

背表紙って、その言葉の通り背中で語りかけてきますよね。

魅力的な後ろ姿の女性を見るとつい顔を見たくなるものですが、本もそれと似た部分があります。

いきなり表紙をバーンと出されるのもまあいいんだけど、なんというか、そそられる後ろ姿というものが何にでもあるわけです。うなじが綺麗とかね、あるでしょ、そういうの。

だけどAmazonにはそれがない。クリックした瞬間表紙がドーン!真っ向勝負!ってね。

わかりやすいし時短にはなるけれど、もっとこうねえ、色気というものが欲しくなるのですよ、中年になると。

表紙の質感も大事。ザラっとしてたりツルツルしてたり、手触りで購買意欲も変わります。

 

生身の本に触れることができる場所にはそれなりの理由と魅力があります。

店内にズラッとタブレットが並んでいるだけのブックカフェは想像するだけで味気ない。

でも近い将来そうなってしまうのかしら。

うーん、ちょっと、いやかも。

 

感謝日記

温泉でリラックスできた。

コロコロとよく笑う女子高生グループが可愛らしかった。

久々にTVを見たら面白くて爆笑。