密かにファンだったりする西原理恵子さん。
初めて彼女の絵を見たときは、あの勢いというかお下品さにちょっと引いてしまったのですが、いろいろな作品を見ているうちに彼女の懐の深さに惹きつけられるようになり、今ではエッセイとコミックを数冊所持するまでになりました。
西原さんの印象を変えるきっかけになったのは何だったかな…ああ、そうだ。「あるこーる白書」出版記念の吾妻ひでおさんとの対談のネット記事。あれがきっかけ。
わたしの父親もアル中でした。もうずいぶん前に離婚して出て行きましたけど。
傍からは上場企業で働く高給取りのように見えたかもしれませんが、実際は週5で飲み屋を渡り歩き、酔いつぶれては朝帰りを繰り返すだらしのない男でした。
毎月10万円以上をアルコールに費やす生活を、わたしが生まれてから離婚するまで25年以上続けた皆勤賞レベルのアル中。飲酒運転で人身事故を起こしても、ガンになってもまったくやめようとしませんでしたね。
表向きは毎日出社しているので、アル中だと言っても信じてくれる人はあまりいませんでした。「ちょっとくらい飲んだっていいじゃない。お給料も良くて家族が生活できてるんだし。」とか平気で言うんですよね。給料良くても大部分を酒で浪費していては生活が成り立たないことくらい分からないのかしら。
毒母もアル中についての知識を得ようとはしないため、「お父さんはアル中じゃない!」とよく騒いでましたね。世間体があったのだと思います。しまいには「アンタが説得しないからお父さんはお酒をやめないんだよッ!」と言いがかりをつけるようになりました。
今にして思えば、父親の会社はアル中を認識していたように思えます。
わたしが子どもの頃に会社の上司の方が来て母親と相談していたこともありましたし、電話がかかってきたこともありました。
ただ、外面が良いだけで知恵も行動力もない毒母が会社に協力できることなど何もなく、そのうち会社も諦めたようで何も言ってこなくなりました。
「このままじゃお子さんがかわいそうですよ。」と言っても、自らの保身が第一優先の毒母には効き目ないんですよね。
そんなこんなで、自分の環境は周囲に理解してもらえないんだなと悟りながら生きること数十年、そこでやっと西原さんと吾妻さんの対談との出会いです。
はっきり言って、衝撃でした。
「そうそう、そうなんだよ!」の連続。まるで我が家を見ているかのように綴られる出来事の数々。夜中に叫ぶとかね。
もちろんすべてが同じわけではないけれど、根幹が繋がっているのを強く感じ取りました。
そして、そこでようやく「父親ってアル中だったんだな。」と自覚したのです。もうその頃には離婚して連絡も途絶えていましたが。
「捨てなきゃダメ」と西原さんはきっぱり断言していて。
やっぱりそうするべきだったんだ。
過去に何十回となく助けて尻ぬぐいをしてきたけれど、そのたび自分がみすぼらしくなっていくのをひしひしと感じていたわたしにとって、この「捨てなきゃダメ」は救いの言葉でした。
学校に向かう途中ですれ違う、千鳥足の酒臭い父親に声をかけるときの恥ずかしさ。
人通りのある通り沿いの我が家の玄関で、白昼堂々酔いつぶれて寝っ転がる父親を家に運び入れるときの情けなさ。
経験者なら共感していただけると思いますが、これらの行動からは羞恥心と自分を卑下する感情しか生まれません。自分の自尊心を自分でぶっ壊している感覚。
本当は、やってはいけないことだと思います。
通学路で無視されてもそれは自業自得ですし、玄関で寝ている姿を見られて通行人に笑われても本人の責任なのですから。
西原さんは子どもと自身を守るため、アル中の旦那さんと壮絶な日々を戦い抜いた末に離婚します。
でも、末期がんになった元旦那さんを看取るんですよね。
「いちど好きになった人を嫌いになるのはつらいなあ」って言いながら。
父親と夫ですから、抱く感情はきっと違うと思います。
わたしは父親を選んだわけでもありませんし、好きになったこともありません。
それでも、そんな人情を持てたら素敵だろうなと思います。
西原さんは他人を鋭い切り口で一刀両断することもあるけれど、根っこの部分では深い人情味のある方なのでしょう。
アル中の夫と過ごす日々を「壮絶」と表現され、西原さんはそれを否定していません。
悲劇のヒロインのように「壮絶な人生でした」と言うこともありません。
でも、苦労はしてきたと淡々と語ります。歩んできた人生をありのまま受け止めているような感じ。
それは他の人に対しても同じで、その人が「自分は大変な苦労をしてきた」と言ったら「そうだったんだね。」と受け止める。
こういう姿勢って見習いたい。
不幸マウンティングなんて意味ありませんものね。
たくさんの苦労を乗り越えて子どもたちを育ててきた西原さんは、現在かっちゃんとしあわせな時を過ごしています。
これからも彼女の描く漫画を楽しみにしています。
感謝日記
思わぬ場面で英語を使えて楽しかった。
おいしい手作りアップルパイをいただいた。
温泉でくつろげた。